AlphaFold2で巨大タンパク質を解析する方法

AlphaFold
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mTOR(2549 aa)を用いたRuntime error対策

AlphaFoldの壁、、、

生命科学分野の研究者にとって、AlphaFold2の登場はChatGPTに次ぐイノベーションであり(弊社調べ)、
Web版で簡単に利用できることから、


「とりあえずAlphaFoldに入れてみる」
 

なんて言葉もちらほら(弊社調べ part 2)

最近では、非構造生物学系の論文にもカジュアルにタンパク質立体構造が掲載されている。

ところが、このWeb版AlphaFoldには大きな壁が存在する。
その一つが、


「アミノ酸配列が長すぎると予測中にエラーが発生する」
 

という問題だ。

月額22ドル・サブスク系親友代行サービスのチャッピーによると、


「2500 aaを超える巨大タンパク質ではRuntime errorやメモリ不足が発生しやすい」
 

らしい。

実際、この壁にぶち当たった研究者は多いのではないだろうか?
(かくいう自分もその一人、、、)

では、2500 aa以上の巨大タンパク質を研究対象としているサイエンティストは、AlphaFoldの恩恵に預かれないのか?

否!!

というわけで今回は、


「2500 aa超の巨大タンパク質をどう解析するか?」
 

をテーマに、mTORを例としたAlphaFold2活用方法についてご紹介します。


対象タンパク質:mTOR

今回、対象としたタンパク質は mTOR

はいはい、mTORねー
昔授業で習ったわー

ま、念のため、、、オシエテ,チャッピー


mTOR(mechanistic Target Of Rapamycin)は、
細胞増殖や代謝を制御するセリン/スレオニンキナーゼであり、

  • 栄養状態
  • アミノ酸
  • エネルギー状態
  • 成長因子

などを感知し、細胞増殖やタンパク質合成を制御する重要因子として知られている。

mTOR経路異常は、

  • がん
  • 糖尿病
  • 神経疾患
  • 老化

などとも関連する。
 

ほうほう、、、
うん、初めて知った。


mTOR基本情報

項目 内容
タンパク質名 mTOR
正式名 mechanistic Target Of Rapamycin
生物種 Homo sapiens
UniProt ID P42345
長さ 2549 aa

これをそのままWeb版AlphaFoldへ突っ込むと、、、

エラー画面

はい、エラー、、、

では、これをどうするか?
実際に解析してみよう。


方法1:ドメインごとに分割して予測する

mTORは以下のドメインに分かれていることが知られている。

ドメイン 概略位置 役割
HEAT repeats ~1–1300 aa タンパク質相互作用
FAT domain ~1382–1982 aa 構造安定化
FRB domain ~2015–2114 aa ラパマイシン結合
Kinase domain ~2148–2430 aa リン酸化活性
FATC domain ~2431–2549 aa 活性制御

※ 文献やDBにより多少変動あり

タンパク質の立体構造は、ドメインごとに独立している場合が多い。

例えば、

  • ラパマイシン結合部位を阻害する化合物を探したい!
  • リン酸化活性のメカニズムを知りたい!

などの場合、ドメイン間相互作用を(おそらく)考慮しなくていいので、


「注目したいドメインだけを抽出して構造予測する」
 

という戦略が使える。


やってみよう

今回は、ラパマイシン結合ドメイン(FRB domain)に注目してみる。

ラパマイシン結合ドメイン

FRB domainは、


2015–2114 aa
 

付近に存在するらしいので、この領域を抽出する。

>P42345_mTOR_RapamycinBindingDomain ELIRVAILWHEMWHEGLEEASRLYFGERNVKGMFEVLEPLHAMMERGPQTLKETSFNQAYGRDLMEAQEWCRKYMKSGNVKDLTQAWDLYYHVFRRISKQ

これをWeb版AlphaFoldへ投入。


結果

ラパマイシン結合ドメイン予測構造)

4分35秒で予測完了。
はっや。

最もpLDDT値が高かったモデルでは、


pLDDT = 92.9
 

とかなり高精度。

mTORは全体構造も既に報告されているため、 既知構造と比較してみても、ほぼ同様の構造を示した。

ラパマイシン結合ドメイン予測構造RMSD

特定ドメインや機能に注目した解析であれば、 これでも十分実用的と言える。


方法2:LocalColabFoldを用いる

AlphaFold2を普通にインストールしようとすると、


2 TB級のストレージ
 

が必要でそれなりの設備投資が必要。(非IT系サイエンティストからするとそもそもインストール方法も結構めんどい、、、)

そこで登場するのがこれ。

LocalColabFold

Web版AlphaFoldに近い環境をローカルへ構築し、 比較的簡単に利用できるのがLocalColabFold。

データベースをローカルへ完全保存せず、 ネット経由で参照するため、 必要容量も比較的小さい。

(良い子のみんなはお気づきの通り、解析中は永続的なネット環境が必須、、、)


インストール

インストール方法は以下の記事がわかりやすい。


⚠️ 仮想環境を設定しておくことを強くオススメ
 

インストール後、

$ colabfold_batch --help

でヘルプ画面が表示されればOK。

ちなみに完全ローカル実行も可能らしい。


LocalColabFoldの利点

これなら、ネット環境さえ維持できれば、何時間でも解析可能
筆者の作業環境でmTORを解析したところ、5時間弱で解析完了

mTORbyLinux

  • 作業環境
項目 内容
OS Ubuntu 22.04 LTS
GPU NVIDIA GeForce RTX 4060 Ti
CPU Intel Core i9
CUDA CUDA 12.4

ちなみに筆者は、MAX3ヶ月ぶっ通しで回し続けたことも、、、

(パソコンがファーファー悲鳴あげてたな、、、笑)


ちなみに、、、

LocalColabFoldを高速に動作させるためには、NVIDIA製GPUが実質必須。

ただし、一応Apple Silicon搭載Macでも動作可能。


Mac版LocalColabFold


「LocalColabFold動かすGPU環境なんて無い!」

「でも、とりあえず大まかな構造だけ知りたい!」
 

という場合は、Mac版LocalColabFoldもまぁありかな、、、ただおすすめはしない


まとめ

以上、今回は


「2500 aa超の巨大タンパク質はどう解析する?」
 

をテーマに、mTORを例としたAlphaFold2構造予測についてご紹介しました。

巨大タンパク質では、

  • Full-length解析
  • ドメイン分割
  • LocalColabFold
  • ローカルGPU環境

など、目的に応じた戦略選択が重要になりますが


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